倒木の責任は誰が負う?土地所有者が知っておくべき法的義務と対応策を徹底解説

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はじめに

年々激しさを増す台風や豪雨、さらには地震や経年劣化によって、日本各地で「倒木被害」が増加しています。道路をふさぐだけでなく、通行中の車や住宅を直撃したり、人命を危険にさらす深刻な事故につながることもあります。

そんな中、「この木、うちの土地から倒れたけど…責任ってあるの?」「台風で倒れたならしょうがないんじゃないの?」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

実は倒木に関する責任は、単に自然災害のせいにできるものではありません。特に木が立っていた場所が「私有地」である場合、所有者の管理状態によっては法的責任を問われる可能性もあるのです。

この記事では、

  • 倒木による責任の考え方

  • 所有者・管理者の法的義務

  • 実際に起きた事例

  • 倒木リスクへの備え方

について、林業やアウトドアの現場にも精通した立場から、やさしく丁寧に解説します。


倒木事故の実例から学ぶ

まずは、実際に日本国内で起きた倒木に関するトラブル事例をいくつか見てみましょう。

◯ 事例①:公道に倒れた私有地の木

ある地域で、強風の影響で私有地のスギが倒れ、隣接する県道に横たわり通行車両を損傷させる事故が起きました。所有者は「台風だから仕方ない」と主張しましたが、事前に木が傾いていた記録が残っており、「管理義務違反」が問われ、損害賠償を命じられました。

◯ 事例②:住宅に倒れた老木

別の地域では、個人宅の裏山にあった老朽化したヒノキが大雨後に倒れ、隣家の屋根を破壊。調査の結果、木は長年にわたって虫害により空洞化しており、所有者は点検も伐採も行っていなかったため「過失あり」と判断されました。

こうした事例からも、「木の管理状態」が責任判断の大きなポイントになることがわかります。


倒木の責任は誰にあるのか?

倒木が原因で事故や損害が発生した場合、法的な観点からは主に「所有者」または「管理者」が責任を問われる可能性があります。

◯ 基本は民法第717条が適用される

民法第717条では、土地の工作物(建物や樹木など)が原因で他人に損害を与えた場合、原則としてその所有者が賠償責任を負うと定められています。

民法第717条(工作物責任)
土地の工作物等の設置または保存の瑕疵によって他人に損害を与えたときは、その所有者が損害を賠償しなければならない。

つまり、所有している土地に立っている木が倒れて誰かに被害を与えた場合、「それが予見・予防可能だったかどうか」によって、責任が問われるか否かが変わってきます。




自然災害と責任の関係

◯ 免責となる「不可抗力」のケース

たとえば、台風や地震のような強い自然災害による倒木で、所有者が十分な管理をしていたと認められる場合には、「不可抗力」として責任を免れることもあります。

ただし、単に「自然現象だった」と主張するだけでは免責されません。樹木の状態に不備があった場合には、「防げた事故」と見なされる可能性があります。


所有者が果たすべき管理義務とは?

木を所有している人には、「近隣や通行人に危害を与えないようにする義務」があります。では、具体的にはどんな行動が求められるのでしょうか。

① 定期的な樹木点検

  • 幹にヒビや割れがないか

  • 樹皮がはがれていないか

  • 枝が異常に伸びていないか

  • 根が浮き出ていないか

などを、年に数回は目視確認しましょう。可能であれば季節ごと、特に台風シーズン前(6~8月)に重点的な点検を行うと安心です。

② 樹木医などの専門家による診断

高木や老木など、自分では判断がつかない場合は「樹木医」や「林業士」などの専門家に依頼するのが安心です。診断書を残しておけば、万が一の際にも「管理していた証拠」になります。

③ 剪定・伐採などの対策

倒木リスクがあると判断された場合、早めの枝下ろしや伐採が必要です。樹木が大きい場合や道路沿いにある場合は、市町村に事前相談をすることでトラブル防止にもつながります。


倒木事故に備えるための保険と制度

日頃の管理に加えて、保険や制度を活用することでもリスクを軽減できます。

◯ 個人賠償責任保険への加入

火災保険や自動車保険に付帯できる「個人賠償責任保険」は、倒木による第三者への賠償もカバー対象になることがあります。家の敷地や山林を所有している人は、ぜひ内容を確認しておきましょう。

◯ 自治体による支援や助成制度

一部の市町村では、老木や危険樹木の伐採に関する助成金制度が用意されています。地域によっては無料で専門家の診断を受けられる場合もあるため、自治体窓口に相談するのもおすすめです。


倒木事故が発生したら

実際に倒木事故が発生した場合、所有者として冷静に以下の対応を行いましょう。

  1. 被害者に対する謝罪と安否確認

  2. 現場の写真・動画の記録(倒れた木、被害状況、天候など)

  3. 保険会社への連絡と相談

  4. 行政・警察・消防への報告(交通の妨げになっている場合)

逆に自分が被害者になった場合も、証拠を押さえ、保険や法的措置の準備を進めることが重要です。




まとめ

倒木による被害は、「たまたま運が悪かった」というだけで済まされない場合があります。木の所有者や管理者には、事故を未然に防ぐための管理義務があるからです。

  • 樹木の定期的な点検

  • 危険木の剪定・伐採

  • 保険や自治体支援の活用

  • 専門家への相談

これらを意識することで、倒木によるトラブルを大幅に減らすことができます。

自然の中で生きる木々は美しい存在ですが、その一方で強い力を持つものでもあります。所有者としての責任を果たし、安全な地域づくりに貢献していきたいものですね。

参考文献:

民法 | e-Gov 法令 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089