木を倒すだけじゃない!林業に潜む危険とその回避法

はじめに

林業は自然の中で行われるため、他の産業と比べて高いリスクを伴う作業です。特に、林業における死亡災害の発生率は全産業中で最も高く、さまざまな危険要因が存在します。本記事では、林業における主要な危険要因と、それに対する適切な対策を詳しく解説します。これにより、林業作業に従事する皆さんが安全に作業を行うための知識を提供します。

伐木作業における危険と対策

ツルの切りすぎとその危険性

危険性: 伐木作業において、ツルは木の重心を伐倒方向に導く重要な役割を果たします。ツルを過剰に切りすぎると、木の重心が予期しない方向に偏り、木が倒れる方向が制御できなくなります。これにより、作業者や周囲の安全が脅かされる可能性があります。

対策: ツルを適切に残し、伐倒計画を立てる際にはツルの位置や状態を確認します。伐木前に現地調査を行い、ツルの状況を把握することが重要です。また、ツルを残す際には、どのように切るかを事前に計画し、伐倒方向に影響を与えないように心がけましょう。

蔓からみの危険

危険性: フジなどの蔓が木に絡まった状態で伐倒作業を行うと、木が予期しない方向に倒れる危険があります。目視だけでは蔓の状態を完全に把握できないことが多く、作業中に絡まった蔓に気づく場合もあります。

対策: 蔓が絡んでいる場合は、伐倒作業前に必ず蔓を取り除くことが必要です。もし目視で判断が難しい場合は、ツールや機械を使って蔓の状態を確認し、適切に除去することが重要です。作業中は蔓の絡まりがないか常に確認し、必要に応じて再度除去作業を行うことが安全確保につながります。

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かかり木による災害

危険性: 伐木作業中にかかり木が発生すると、その処理が非常に危険です。かかり木を無理に伐倒しようとしたり、他の木を利用して倒すと、木が跳ね返ったり予期しない方向に倒れるリスクがあります。

対策: かかり木の処理は、必ず作業マニュアルに従い、安全な方法で行うことが必要です。かかり木の伐倒や元玉切りを行う際には、十分なスペースを確保し、他の立木にぶつからないように注意しましょう。また、かかり木の処理には熟練した作業者が担当することが望ましいです。

チェーンソーと刈り払い機のリスクと対策

チェーンソーのリスク

危険性: チェーンソーの使用中に発生する「キックバック」は、チェーンソーが突然跳ね返り、作業者の上半身を傷つけるリスクがあります。これにより、重大な切創事故が発生する可能性があります。

対策: チェーンソーを使用する際には、防護ズボンやグローブを着用し、キックバックを防ぐための適切な技術を習得することが重要です。作業前には、チェーンソーの点検を行い、刃の状態や機械の機能が正常であることを確認します。また、チェーンソーの取り扱いについては、定期的な研修やトレーニングを受けることが推奨されます。

刈り払い機のリスク

危険性: 刈り払い機の刃は非常に鋭利で、手や足の切断事故を引き起こす可能性があります。さらに、作業中に他の作業者と接近することで、刈刃同士が接触するリスクもあります。

対策: 刈り払い機を使用する際には、必ず防護具を着用し、作業エリアを整理整頓することが重要です。他の作業者と作業エリアが重ならないようにし、十分な距離を確保します。また、刈り払い機の取り扱いについての知識と技術を習得し、安全な作業を心がけましょう。

地形と自然災害のリスクと対策

傾斜地での転倒・転落

危険性: 山林のほとんどが傾斜地であり、転倒や転落のリスクが伴います。特に、上下移動だけでなく、等高線に沿った横移動でもリスクが高まります。

対策: 傾斜地での作業中は、足場の確保が最も重要です。滑りにくい靴を履き、足元を注意深く確認しながら移動します。また、チェーンソーや燃料などの機材を持って移動する際には、荷物を適切に固定し、バランスを保ちながら移動することが求められます。転倒リスクを減らすために、作業前に地形の確認と整備を行うことも重要です。

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自然災害のリスク

危険性: 台風や大雨によって地盤が緩むと、作業道崩壊や土砂崩れのリスクが高まります。また、転石や落石による事故も懸念されます。

対策: 自然災害の影響を受ける可能性がある場合は、事前に天候情報を確認し、安全な作業計画を立てることが重要です。地盤が緩んでいる場所では作業を控え、作業道の点検と補修を行います。特に土砂崩れや落石のリスクが高い場所では、作業を行う前に地形の調査と安全対策を徹底します。

鳥獣害のリスクと対策

熊による危険

危険性: 熊による被害が増加しており、山林での作業中に熊と遭遇するリスクがあります。特に、出会い頭に熊と遭遇すると危険度が高まります。

対策: 熊の出没が多い地域では、常に警戒を怠らないことが重要です。熊鈴や笛を使って音を立てることで、熊に自分の存在を知らせることができます。また、熊に遭遇した際には、冷静に行動し、無理に接触しないように心がけます。万が一、熊との遭遇が避けられない場合には、安全な距離を保ち、すぐに避難することが推奨されます。

蜂による危険

危険性: 蜂は特定の色や匂いに対して攻撃的になりやすく、蜂の巣を刺激すると大量の蜂に襲われる可能性があります。特に、スズメバチは秋にかけて凶暴化する傾向があります。

対策: 蜂の巣や活動している場所を事前に確認し、できるだけ近づかないようにします。作業中には蜂の巣を刺激しないよう注意し、スズメバチが多い時期には特に注意が必要です。蜂に刺された場合には、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けることが大切です。

まとめ

林業にはさまざまな危険が伴いますが、適切な知識と対策を講じることで、作業の安全性を高めることができます。伐木作業から機械の使用、地形や自然災害、鳥獣害に至るまで、各リスクに対する対策を講じることで、安全に作業を進めることができます。林業作業の安全性を確保するためには、常にリスクを意識し、適切な予防策を講じることが不可欠です。

 

参考文献

  1. 林野庁 「林業労働安全衛生対策の推進」
    • URL: https://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/anzen/nii.html

 

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