林業における外国人労働者の活用はあり?なし?

林業における労働者の減少は重要な課題となっており、これに対処するため外国人労働者の活用が注目されています。

しかし、日本の情勢は円安・物価高。日本で働く外国人労働者の確保に大きな影響を及ぼし始めています。
また、林業特有の特殊な労働環境は外国人労働者の受け入れにあたって大きな課題となっています。とりわけ、労働災害発生率の高い林業では労働安全対策が課題となります。

林業の現状と課題

日本の林業は、高齢化と過疎化が進む地域で行われることが多く、若年層の就業者が減少しています。その結果、労働力不足が深刻化し、林業の持続可能性が危ぶまれています。特に山間部では、森林の管理や木材の伐採、運搬といった作業が困難を極めています。このような状況では、労働力の確保が急務となります。また温暖化の影響により、以前よりも夏場の気温が上昇し熱中症リスクも高くなり、林業従事者の負荷を増えています。

外国人労働者の受け入れ

このような状況を受け、日本政府は特定技能制度などを通じて外国人労働者の受け入れを促進しています。特定技能制度では、一定の技能と日本語能力を持つ外国人が、農業や林業を含む特定の産業で就労することが可能となっています。これにより、労働力不足の解消が期待されています。また、外国人技能実習制度もあり、技能実習生として日本に来る外国人も増えています。これにより、地域の労働力不足を補うだけでなく、外国人労働者自身も新たなスキルを習得する機会を得ることができます。

高まる外国人労働者の待望論

外国人労働者の現状

日本における外国人労働者数は2021年で約173万名にまで増えています。中でも技能実習生はコロナの影響で増減はあったものの、全体的には右肩上がりに増加しています。

林業では、2021年で技能実習生が61名、合計161名が雇用されています。

在留資格

外国人労働者が日本で働くには、専門的・技術的分野もしくは身分に基づく在留資格を有していなければなりません。留学生などの資格外活動でも一部認められていますが誰でも就労できる訳ではありません。

労働力の確保

日本における労働力は、緑の雇用により一定の労働者が確保されています。

一方で、木材生産などの労働力は増加しているものの、人力の多い造林では減少の一途をたどっています。特に下刈りや植林は人力に頼らざる得ず外国人労働者の待望論がやまない状況です。

受け入れに向けた方向性と課題

技能実習制度

林業での受け入れは体制や環境が整っておらず期間は1年のみです。3年、5年の受け入れを可能とするには技能を評価する試験が必要となります。そのため技能を評価する試験や作業等を審査する専門家会議が行われています。

一方、技能実習生に対する労働関係法令違反などが問題になっているケースが多発しています。

政府の対応

外国人の受け入れに係って、技能実習・特定技能の両制度の施行状況を検証し、適正な受け入れに向けた検討が行われています。このことにより、適切な制度運営と制度の拡大がされると想定されます。

言語と文化の壁

外国人労働者は日本の言語や文化に適応する必要があります。

また受け入れ側も言語学習や文化交流を提供することで円滑な受け入れを支援する必要があります。

教育とトレーニング

林業に関する知識や技術を習得するためのトレーニングと教育が不可欠です。

受け入れ側は適切なスキルを提供する必要があります。

コスト

技能実習生を雇い入れるには、給与、福利厚生費以外にも、渡航費、研修費、監理費などのコストが見込まれます。

円安の影響

円安により日本ではなく韓国やオーストラリアが選ばれる傾向にあります。

また送り出し国であるベトナムの経済成長が著しく、円安も相まって日本との賃金差は縮まっています。

その他、一次産業における外国人労働者の受け入れ状況

農業における外国人労働者の受け入れ状況

農業分野でも外国人労働者の受け入れが進んでいます。特に、収穫期などの繁忙期には、外国人労働者が欠かせない存在となっています。特定技能制度と技能実習制度を通じて、多くの外国人労働者が日本の農業現場で働いています。彼らは、野菜や果物の収穫、植え付け、農作物の管理など、多岐にわたる作業を行っています。

外国人労働者の存在により、農業現場では労働力不足が解消され、生産性が向上しています。さらに、外国人労働者が持つ独自の農業技術や知識が、日本の農業に新たな視点をもたらし、技術革新を促進することも期待されています。

水産業における外国人労働者の受け入れ状況

水産業においても、外国人労働者の受け入れが進んでいます。漁業や養殖業の現場では、重労働や長時間労働が伴うことが多く、日本人労働者の確保が難しい状況にあります。外国人労働者は、船上での漁業作業や水産物の処理、養殖場での作業などに従事しています。

特に、技能実習制度を通じて多くの外国人労働者が水産業に従事しており、彼らの存在が産業の維持と発展に不可欠となっています。また、外国人労働者がもたらす新しい技術や知識が、地域の水産業における効率化や品質向上に寄与しています。

外国人労働者受け入れの展望

外国人労働者の受け入れには、多くの利点がありますが、課題も存在します。言語の壁や文化の違いが大きな障害となることがあり、現場でのコミュニケーションが円滑に行えない場合もあります。また、長期的な労働力確保のためには、労働条件の改善や定住支援が必要です。例えば、住宅の提供や生活支援、日本語教育の充実が求められます。さらに、地域社会との共生を促進するために、地域住民との交流イベントや文化紹介活動なども重要です。

しかし、これらの課題を克服することで、外国人労働者の存在は日本の林業、農業、水産業において重要な役割を果たすことができるでしょう。地域社会と外国人労働者が協力し合い、共に発展するための取り組みが求められています。また、外国人労働者が持つ多様なバックグラウンドや知識を活かすことで、新たな視点からの改善策や効率化が期待されます。

まとめ

日本の林業における労働力不足は深刻な問題ですが、外国人労働者の受け入れによってその解決が図られています。彼らの労働は現場作業に欠かせないものであり、新たな技術の導入も期待されています。農業や水産業においても、外国人労働者の受け入れが進んでおり、産業の持続可能性を支えています。これからも外国人労働者と地域社会が協力し、持続可能な発展を目指していくことが重要です。

 

参考文献